他人の家なのに大掃除奮戦記


2005/04/05 他人の家なのに大掃除奮戦記 開幕編 

 最近、やっと『魔法戦隊マジレンジャー』なるものを見ました。
 ゴレンジャーなどのいわゆる5人戦隊もので、ヒーローなので当然登場するたびに名乗りを上げます。

「まじレッド!」
「まじイエロー!」

 ……どんな色なのか気になります、籐太です。


 東京へ移住してから早1ヶ月が過ぎました。
 現在、私は友人宅で3人暮らしをしているわけですが、初めて彼らの住むアパートを訪ねたとき、はっきり言って衝撃でした。

 始めに言っておきますが、私は別にきれい好きというわけではありません。むしろ、大阪の大本営(築60年のボロアパート、空襲にも耐えられる防火構造が自慢=私の部屋)は自慢じゃないけど汚いです。

 そんな私ですから、男2人が暮らす部屋、多少の汚さは覚悟の上でしたよ。

 しかし東京での生活、第1歩を踏み出した瞬間に、その自信はあっさり崩壊した。

 靴下を履いてるというのに、床がネチャネチャしてるのがわかります。
 っていうか、見た目がもうすでにヤヴァイ。モザイクをかけないとソフ倫審査もパスできませんよ

 まあ、一言で言うとゴミの山。山っていうか、山脈。ゴミ袋に詰められた燃えるゴミ、燃えないゴミ、生ゴミ、資源ゴミ、生ゴミ、空き缶、空きビンなどが折り重なり、ダイナミックな地層を形成しています。

 とにかく部屋の三分の一はゴミという名の侵略者によって、不法占拠されてるわけですよ。

 しかもどうやら、東京は大阪とは違い、ゴミの日というものがあるらしく、何曜日は何のゴミを出すと決まってるものですから、1週間かけてゴミを出すことから私の東京での生活が始まったと言っても過言ではない。

 というわけでしばらく、眉間にタテじわは
『他人の家なのに大掃除奮闘記』
 をお送りしたいと思います。

 家主には許可をとってないけどな、籐太でした。


2005/04/09 他人の家なのに大掃除奮戦記 キッチン死闘編

 今さら読んでいる戦闘妖精・雪風<改>がおもしろすぎます。
 戦闘機同士のドッグファイトで、意味不明の専門用語が連発されているというのに、なぜか大興奮
 専門用語フェチな、籐太です


 それはさておき、『他人の家なのに大掃除奮戦記』第2回。
 正直、書けば書くほどブルーになるので、4回くらいでやめたいと思ってます。

 なにはともあれですね、生活にとって一番重要なのはである、というのが私の持論です。
 ですから、真っ先に洗うべきはキッチンだと思い、買い物に行きました

 洗剤とか、たわしといったものがないからです。

 洗ったことがあるのか? と疑問に思いながら、ステンレスのはずなのに黄色かったり白く濁ってたりするシンクを必死で磨きます。

 そして出しっぱなしの鍋。
 黒ッ

 こんな黒い鍋は見たことありません

 なにこれ? と聞くと、ポンと肩を叩かれ

大丈夫だよ」

 と家主の1人が言います。

何が大丈夫なのか教えてください

 だいたいなんで黒いのかって言うと焦げてるからなんですよ。
 指先で擦るだけで、得体の知れない消し炭がぼろぼろと崩れてきます。

 こんな鍋で料理を作ったら、たぶん死ぬ

 というわけで鍋は新しいのを買った、俺の金でな

 でもまあ、キッチンにはコンロが2つついてるし、魚焼き用のグリルまでついてます。

 大阪のアパートにはコンロが1つしかないので、自炊派の私としては大助かりです。

 ん? 待てよ、グリル?

 そう言えばまだ、ここだけ中を見ていません

 一見、なんの変哲もない魚焼きグリル。
 無論、取っ手はプラスチック製ですよ。でも触った感触はねちゃ。なにかが指に付着しています。

 考えるな、感じろ! と自分に言い聞かせ、思い切って開けます。
 そして、閉めます

 おそらく二度と開かれることはないでしょう。
 ていうか、開けたくない。できることなら、記憶喪失になりたい


 1ヶ月半経った今でも、魚を焼くときはフライパンを使っている、籐太でした。


2005/04/13 他人の家なのに大掃除奮戦記 寝室苦悶編

 前回の後日談――

 魚焼きグリルの話を読んだ家主Aが、ダンと机を叩いて言いました。

「あれを使ったのはだいぶ前だからもう大丈夫だよ!
「…………」

 籐太です。

 『他人の家なのに大掃除奮戦記』シリーズ第3回。
 しごくあっさりと書いていますが、大掃除にはリアルに半月以上かかっています。

 今回は寝室の掃除です。

 とりあえずホコリがすげえ

 男の部屋だから万年床なのは当然として、棚の上に乗ったフィギュアや小物が灰色の雪を被ったような状態
 部屋の四隅は言わずもがな、テレビの裏など一瞬、カーペットでもひいてるのかと思ったほど、ホコリが堆積しています。
 ……掘り返したらホコリが地層になってそう、ていうか化石まで発掘されそうです。

 とにかく、こんな部屋で寝ていては病気になると思った私は意を決して言いましたよ。

「とりあえず掃除機はどこですか?」
「なにそれ、おいしいの?」

 てな勢いで、手渡されたのはほうき雑巾

 ああ、思い出す。学生だった頃の掃除の時間
ここは小学校か!?

 そもそもここまでホコリが堆積していると、ホウキで掃くのは自殺行為
 くしゃみ鼻水がだらだら流れて止まりません。

 仕方なく雑巾がけをすると、ただの畳を拭いているはずなのにみるみる色が変わっていくのはホント勘弁して欲しい

 そんなわけで掃除機をタダで譲ってくれる東京の友人を探している、籐太でした。


2005/04/16 他人の家なのに大掃除奮戦記 風呂場地獄編

 前回の後日談――

 ついに意を決して、お願いだから掃除機を買ってくれと頼んだところ、家主Aは言いました。

ハア? 何に使うんだよ!?
「…………」

 籐太です。

 『他人の家なのに大掃除奮戦記』シリーズ最終回。
 多少、大袈裟に書いてるかも知れないけど、すべてノンフィクションです。繰り返す、これは訓練ではない!

 というわけで、最後は風呂です。

 壁は黒。真っ黒。タイルにも黒のぶちぶち模様があって、なかなかおしゃれです。
 もちろん漂ってくる香りは……

物ッ凄いカビ

 カビ、風呂って言うかカビ。もう全部カビ

 とりあえず柄付きブラシを取り出し、浴槽と壁の隙間を擦る。続いておもむろに水ですすぎます。
 限りなく黒に近い緑色をした液体が、溶かしたバターようにどろどろと流れ出し……

うぼぉうぇああぁぎぐぼぉうぇあああああ

 さらに水が張られたままの浴槽、そのお湯の出るところにジャバを突っ込んで掃除します。

 水を流すと浴槽内に大量の髪の毛がソフトボール大も浮き上がってきて、まるで貞子です。

 もうなんなんですか、リング? リングなのか? 呪いのビデオでも見たのか!? それとも呪怨? 呪怨か! トシオ! トシオォオオオオオ!!

 とにかく排水溝がつまらないよう髪の毛を手でかき集め、ゴミ箱にダンクシュートした後、必死手を洗いましたよ。

 あ、待てよ……










今夜、私はこの風呂に入るんですか?

 マツモトキヨシで買ってきた、カビキラーの包装を脊髄反射で引き裂いて、涙を流しながらノズルを連射してやりましたよ。
 もう風呂中、カビキラーだらけになって、肺が痛くなるほどの匂い

 するとどうでしょう? 洗ってないダルメシアンのような黒ブチだった壁やタイルが、白色になったんですよ。初めて白色を見たかのような

 ……つまりはそれだけ汚れてたってことだが、そんなことは忘れてもいい。ていうか、忘れろ

ビバ! カビキラー!

 私は一生、カビキラーの栄誉を称え続けるだろう。
(ただし、カビ臭の代わりにカビキラー臭が取れなくなりました)

 そして、さっそくこの成果を家主に報告しましたよ。
 すると彼は私の苦労をねぎらうようにポンと肩を手で叩き、言いました。







「どうせ、すぐ汚れるよ」

 死ネ死ネ、ホント死ネ

 ちなみに風呂を掃除したブラシは、トイレ用だと言って渡された物だったのは内緒だ。
 ていうか、トイレは初めて見た瞬間、無理だと思ったので未だに手をつけていない。

 ついでに部屋はもう一つあるんですが、そこはナウシカで言うと腐海なので、マスク無しで入るのは姫様でも危険です

 ていうか、夜中に誰もいないはずのその部屋からドカドカと走りまわる音が聞こえてくるのはなんなんですか?
 怖くて未だに確かめることができません(実話)。

 きっと座敷ワラシとかが走りまわってるに違いない、と思うことにした籐太でした。






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